私の手元に今、出版サポートを依頼されている原稿があります。
全12万文字の大変な力作で、B5サイズの紙に印刷された状態で200ページ。
「心」と「氣」と「身体」そして「言霊の原理」について解説した作品です。
あい出版としてもコトダマ鑑定士としても、とても興味深い内容です。
しかし…。
この12万文字のうち5万5千文字、約45%が引用だったのです。
本を出版するとき、他の人が書いた文章を引用することがあります。
この記事では、『著作権と引用』について分かりやすく解説していきます。
著作権について
著者のモラルとして、著作権というものを理解しておかなくてはなりません。
『はじめての出版』にあたり知っておきたいことを分かりやすく解説していきます。
著作権とは
著作権とは、著作物を保護するための権利です。
著作権には、「財産権」と「著作者人格権」があります。
財産権とは、著作物という財産に対する権利。
…勝手にコピーしないでね、ということですね。
著作者人格権とは、著作物を創作した人がもつ権利。
…著者の名誉とか、作品への想いを守るイメージですね。
…この権利は、他人に譲ることができません。
一般的には、「著作権=財産権」と思われがちですが、「人格権」も大切な権利です。
著作権の対象にならない文章は、限られています。
つまり、世の中は著作権だらけだと思っておいてください。
著作権が発生しないもの
①単なる事実
例:xxxx年12月31日は、関東地方に大雪が降った。
NG例:単なる事実ではなく著作権の対象
xxxx年12月31日は、関東地方に大雪が降った。
雪国育ちの私は、子どもの頃を思い出してワクワクした。
②法令の条文・条例、通達など
③裁判の判決、判例、決定、命令など
こんなものにも著作権?
意外なところに発生する著作権を、いくつかご紹介しましょう。
- 個人がSNSに投稿した、写真・イラスト・動画など
- 個人のブログ記事
- 幼児の落書き
- 雑誌の写真に添えられた説明文
- 地図
- 判例の解説文
著作権って時効あるの?
日本では、著作権は70年間守られることになっています。
※国によってルールが違い、日本においても今後70年より長くなる可能性もあります。
著作権は「ある」という前提で、引用を考えるのが安全です。
お経や神話は、どうなの?
たとえば、お経や神話、古文書、古典文学などは、どうでしょう?
たしかに、著作権は発生しないと思います。
※新興宗教の経典などは、比較的新しいので、著作権が発生する場合もあります。
著作権がないんだから、引用しても問題ないよね?
…と思いますよね。
引用ルール
次に、引用について考えてみましょう。
あい出版では、著者のモラルとして【引用ルール】を設けています。
著作権法第32条(引用)を遵守するのは、もちろんのことですが読者の目線も忘れないでくださいね。
一般的なルール
著作権者に許可をもらう
引用したい文章等の著作権者に、直接お願いして引用の許可をもらいましょう。
必要があれば、利用料を支払います。
あくまで私的に利用する
出版せずに自分や家族のために印刷物をつくる場合は、引用ルールを気にせず全文をコピーしても大丈夫です。
自分のために写経するとか、ライティング・スキルアップのために、お気に入りの作家の小説を全部書き写すとかは、OK。
でも、友達100人に配るとなると、私的とはいえません。
本当に「私的な利用」かどうか確認してくださいね。
著作権法第32条に基づき、適正に引用する
法に基づき適正に引用するポイントは、以下の7つです。
著作物が公表されていることで、非公開の著作物は、引用NGです。
①引用部分を明確にする
どこからどこまでが引用部分なのかはっきりわかるようにしましょう。
- 引用部分の前後に明記:
引用部分前後に(以下、引用)(引用、以上)と明記する - 囲み枠を使う
- フォント(書体デザイン)や文字の大きさを変える
- 太字やアンダーライン、マーカーなどを使う
- 「“」「”」マークで区切る
…など
②引用元を明確にする明示する
- 引用元書籍のタイトル、著者名、発行日、ページ
- 引用元ウェブサイトのウェブサイト名、UR
③勝手に内容を変更しない
引用元の通り、一字一句変更しない
④目的に対し正当な範囲内で引用する
引用とは、著者として「自分の意見や主張が」あり、それを補強したりわかりやすくするためのものです。
この目的に対して妥当な引用かどうか?がポイントになります。
⑤本来の目的のために引用すること
たとえば、
「ビタミンCは、経口摂取しても意味がない!」という著者の意見があるとします。
※あくまで例です。
自著で、「ビタミンCを経口摂取した場合の研究論文」を引用する場合:
論文を批判的に引用すると、著作者人格権を侵害するかもしれません。
あるいは、
「ビタミンCは、積極的に経口摂取すべき!」という著者の意見があるとします。
※あくまで例です。
電子書籍の場合、広告(アフェリエイト)収入を得ることも可能ですが、広告収入のために某社ビタミンCの広告を引用すると、本来の目的からはズレてきますよね。
⑥著者オリジナルの文章が主体であること
著者(あなた)の著書なので、メインは当然あなたの文章です。
引用は、あくまで、あなたの意見や主張などを補う、強める、分かりやすくするためのもの。
…ということを、どうぞお忘れなく。
あい出版の引用ルール
それでは、あい出版の引用ルールをご紹介します。
大前提として、上記の「一般的なルール」は、全て守っていただきます。
が、あい出版では、読者の気持ち、引用元の著作権者の気持ちにフォーカスし、引用のハードルを思いっきり高くしています。
その引用、本当に必要ですか?
あなたの著書にその引用が本当に必要かどうか、もう一度、考えてみてください。
あなたの意見・主張を読者に伝えるために、その引用は不可欠でしょうか?
- この引用は、なくてはならない
- この引用は、あった方がいい
- この引用は、なくてもいい
- この引用は、もしかしたら、必要ないかも
どうでしょう?
本当に必要ならば、必要な理由も明確だと思います。
「なぜ、引用するのか」という著者オリジナルの文章が書けるなら、引用OKです。
厳しいことを言いますが、もし、引用の理由を明確に言語化できない場合、そもそも引用する文章をあなたが十分に理解していない可能性があります。
あなた自身が、あなたの意見に対して曖昧だったり、自信がない場合に引用を多用することでごまかしてはいないでしょうか?
もしかして、ページ数を増やすために、引用してはいませんか?
引用元が同じだからって、省略していませんか?
引用元、引用部分を明らかにすることは、一般的なルールでもあります。
あい出版では、各引用部分ごとに、いちいち徹底的に明示することを推奨しています。
同じ著者の同じ著書の引用を繰り返す場合、「当然分かるでしょ」という感じで引用元の明示が、曖昧になることがあります。
引用部分には、何度でもしつこいくらい「タイトル、著者名、発行日、ページ」を明示してください。
冒頭部分や文末に、まとめて「p.22/p.33/p.44の太字部分は全て(タイトル・著者名・発行日・ページ」の引用です」明示することもできます。
著者の気持ちは、どうでしょう?
「引用したい!」と思ったあなたにとって引用元の著者は、どんな存在でしょうか?
尊敬している?
大好き?
同じ目的に向かう仲間?
…いずれにしても、あなたにとって大切な存在だと思います。
※あい出版では、否定的な引用はNGです。
何かを否定したり誰かを非難するための作品は、あい出版のサポートをお断りしております。
その大切な人の、気持ちを想像してみてください。
あなたが引用することによって引用元の著者は、ハッピーになるでしょうか?
あなたの読者をハッピーにするために、引用元の著者の気分を害することにはならないでしょうか?
引用元の著者の意図を取り違えてはいないでしょうか?
あなたにとって読者が大切なのと同じように、引用元の著者も大切にしてください。
読者の気持ちは、どうでしょう?
あなたは、引用の多い本を読んだときどんな印象を受けるでしょうか?
私なら、「それなら、引用元の本を自分で読むよ」と思いますね。
自著を出版するとき、私は基本的に引用を用いません。
だって、私の本だからね。
参考にする著書はあっても自分なりに嚙み砕いて、自分の言葉で表すのが著者の使命だと思っています。
一般的な読者の気持ちとして引用部分が多い本は、中身が薄いと感じるのではないでしょうか?
もし、あなたが、たくさん引用しないと書けないなら…。
厳しいことを書きますが、まだ、その本を出版する準備ができていないのかもしれません。
引用で文字数やページ数を稼ごうとしているなら、書くべきことが足りないのかもしれません。
というわけで、あい出版オリジナル引用ルールです。
※全体の文字数に対して、引用部は最大でも10%未満とする
※各章、各節・各項に対しても、文字数に対して最大10%未満とする
具体的な指標をお伝えすると、ほとんどの場合、引用部分の文字数を削っていただけます。
文字数を最低限にすることで、引用そのものが効果的になるケースが多いです。
この原稿どうする?【著作権と引用】まとめ
今回の出版サポートでは、
- 引用部分の総量を限界まで減らすこと
- 章全体が引用である部分については、章立てから外し付録として掲載すること
などを提案し、納得していただきました。
原稿全体が、キリっとスリムになってきましたよ!