- ケース
- 早すぎる反抗期
- ゲームをやめさせたい
- 一日中、不愉快
- 約束を守らないのは誰?
- 反抗期は熱病・筋肉反射
- 徹夜でゲーム
- ひとつめの提案・話し合いの時間
- ふたつめの提案・「私は」で話す
- みっつめの提案・ゆっくり、小さくて低い声で
- 自分の声で自分を癒す
- 2秒だけ待つ
- 男性の原始脳について
ケース
相談者:女性(30代・自営業・エステサロン運営)
家族構成:夫(30代・美容師・美容院勤務)長男(小学3年)長女(5歳)
相談内容:長男の反抗期に強いストレスを感じ、一日中イライラ・ムカムカしている。
早すぎる反抗期
T(TOMOKO):息子さんの反抗期は、具体的にいつ頃から、どのような感じで始まりましたか?
S(相談者):もう2年以上続いているんです。ふつう、第1次反抗期って、5年生とかですよね。どんなに早くても4年生だと思ってたんですけど。うちの子って今3年生で、もう1年生の終わりくらいから、すごい反抗してきて。早すぎますよね。
T:たしかに、平均的な反抗期年齢っていうのは、ありますよね。10歳から11歳あたりかな?でも、あくまで平均ですからねぇ。個体差は当然あるし。早い方ではあるけれど、そのこと自体は、何の問題もないと思いますよ、精神的な成長が、平均より早いっていうことで、それ以外に意味付けをすることもないでしょう。
少なくとも、反抗期がないまま大人になるより、健全なような気がしますね。動物的に、親から離れて生きていくためのステップですから、きちんと踏んでおいた方がいいと個人的には感じています。
まぁ、精神的おませな子っていうのは、身近な大人からみると、扱いにくいですけどね。
さて、息子さんは具体的に、どのような反抗を?
S:とにかくゲームですね。うちは夫も私も家を空けていることが多いので、息子がすごくゲーム好きなんですけど、制限時間っていうのは設けてないんですよ。
ただ、その日にやらなくてはいけないことを済ませてからやるっていう約束で。
T:やらなくてはいけないこと?
S:学校の宿題と、週に1回行ってる塾の宿題を必ずやること。それが終わったら、寝る時間までゲームはしてもいいことにしてます。
だから夏休みとか 冬休みは、本当に1日中ゲームやってるんですよ。
うちが時間制限をしてないって知ってるから、息子の友達が何人も来て、うちはゲーム場みたいになってる。他のうちだと、お母さんに注意されるけど、うちは誰も止めないから。
T:なるほど。やらなくてはいけないこと、は、学校と塾、それぞれの宿題だけってことですね。それさえ終わらせたら、寝る時間までゲームやりたい放題。
S:そうなんです。だから、他の友達より、ゲームがたくさんできてラッキーだと思うんですよね。
T:息子さん、3年生ですよね。なにか家族の中での役割というか、決まったお手伝いとかはないんですか?
S:個別に頼むことはあります。ゴミを出してくるとか、お風呂の給湯スイッチ押すとか、炊飯器のスイッチを押すとか。そういうのはやってくれますけど、毎日これをやるっていうのは、特に与えてないです。
T: なるほど。まぁ、このあたりは各家庭ごとの考え方次第ですけど、私個人的には、お子さんにも家族の一員として、役割があった方がいいと思うんです。
ご両親の忙しい姿を見ていてね、自分も何か役に立ちたいという気持ちは、潜在的にもっているはずなんです。自分の位置、みたいなものをお子さんが意識する機会を、つくってあげてもいいんじゃないかな?
S:はぁ…。まぁ…。でも、何かやらせると、後が面倒で…。
T:そうかもしれませんね。お母さんがやった方が、なんでも早く、きちんとできるしね。この話は、また改めてにしましょう。
ゲームの話でしたね。具体的には、ゲームに関して、どういう反抗があるんでしょうか。
ゲームをやめさせたい
S:とにかく毎日、ゲームをやめさせて、歯を磨かせて寝かせるまでが。もう毎日ですよ! 毎日!もう、ものすごいストレスなんです。
T:寝る時間は決まっているんですか?
S:9時半っていうことにしています。
T:9時半に、お母さんが「ゲームをやめて、歯を磨いて、寝なさい」と言うと、そこから 反抗が始まるということですか?
S:最初はそうしてたんですけど、どうせその時言っても、言うこと聞かないので。今は9時になったら、あと30分で終わりだよって、ちゃんと予告してるんですね。なのに9時半になると、グズグズグズグズ言い出して。
結局、毎日、口喧嘩みたいになって。もう毎日。本当に、それがストレスで、どうしようもないんですよ。
T:9時になると、お母さんが「あと30分だよ」と前もって伝えているわけですね。
S:そうです。
T:その時は、反抗はしないんですか。
S:うん、とか、わかった、とか。
T:なるほど。で、9時半になったら「30分たったよ」と声をかける?
S:息子はまだ 時計が読めないので、9時の時は、長い針が今12だから、になったらやめる時間だよ って言って、9時半になったら、もう長い針が6まできたよ、って言います。
9時のときは、わかったって言ってるから、ちゃんと9時半にやめる約束ができてるわけですよね。
でも9時半になると、もう約束を破ってる。
T:9時半にお母さんが声をかけると、どんな反応をしますか?
S:えー、もう?とか、まだやめたくないとか、グズグズグズグズ言い出して。もう毎日同じことの繰り返し なんですよ。
一日中、不愉快
T:実際に息子さんが寝るのは何時頃になりますか?
S:毎日10時過ぎで。だから私は、もう9時になる前から10時過ぎまで、ずっと嫌な時間だ し、そのことを考えると、もう一日中ずっと嫌なんですよ。あの時間、本当に何とかしたい。
T:息子さんと揉めるというか、息子さんのグズグズに対応する時間は、9時半から10時の30分間ということでしょうか?
S:そうですね。だいたい、そうです。でも、それが毎日毎日続くんですよ!
T:その30分間、どういう会話があるんですか?
S:こっちはもう約束してるし、30分前からちゃんと予告して、その時に分かったって言ってるので。何で約束を守れないのか、とか、明日起きられないでしょう、とか。
それに対して息子は、なんか適当なこと、起きられるよ、とか、いつも約束も守ってるじゃん、とか、本当に訳の分からない口答えしてきて。とにかくグズグズグズグズ言ってるんですよ。
T:最終的に、10時過ぎには寝るんですよね。10時には納得して、歯磨きして寝るのですか?
S:違いますよ!前に私、本当に言うこと聞かなくて、ゲームを取り上げてたことがあって。 1週間以上、取り上げて隠してたんですけど。その時は本当にやることがなくて、我慢できなかったみたいで。
このままだと、またゲーム取り上げるよって言うと、最終的には、ふてくされた感じで洗面所に行って、歯ブラシ口にくわえて、ちゃんと磨きもしないで、なんかブツブツ文句言って、やっと寝るっていう感じです。
T:なるほど。ゲームを取り上げられたら嫌だから寝る。
S:ゲームを取り上げられるのが一番怖いので。
T:つまり、10時頃になるとお母さんが「ゲームを取り上げる」という脅しをかける。そこで息子さんは、諦める。…というパターンになっているわけですね。
S:はい、だいたいそんな感じです。
T:なるほど…。
S:でも9時には、毎日、自分で9時半にやめて寝るって約束してるんですよ。なのに毎回、約束破るって、どう思いますか?しかも、なんか適当な言い訳っていうか、全然関係ないことで、私を攻撃してきて、本当にムカつくんですよ。
約束を守らないのは誰?
T:お母さんを攻撃?どんなことを?
S:この間も、たまたま掃除機をかけようとして、息子の部屋に入ったんですね。私、普段は息子の机の中を探ったりすることはないんですけど。その日は、たまたま引き出しがちょっとだけ開いてて、なんとなく気になって中をみたんですよ。そうしたら塾の宿題っぽい プリントが5枚もあって。何もやってなかったんですね。
学校の宿題と塾の宿題、やることだけは絶対にやって、その後だったら寝るまでゲームやっていいよ、っていうのが約束なのに、それを守っていなかったんです。
それで息子に、これどういうこと?って問い詰めたんです。なんで嘘つくの?って。そしたら息子は、謝りもしないで。勝手に俺の机の引き出し開けたって、それ許せないんだけど、謝ってくれない?って反抗してきたんですね。
うちで前から約束していることがあって。うちは家族みんなの場所だけど、それぞれのカバンの中には大切なものが入っているから、カバンは勝手に開けないことっていうのが約束なんですね。もし財布の中身が減ってたりした時に、家族を疑ったりするのは嫌だから。
そしたら、その約束を持ち出してきて。お前、って私のことお前って言うんですよ、3年生のくせに........お前は、人のカバンは絶対に開けるなって言っといて、俺の机、勝手に開けてるじゃん。大人は何でもやって良くて、子供は大人が勝手に決めたルールを全部守らなくちゃいけないわけ?とか言ってくるんですよ。そういう、なんか生意気なのって許せなくないですか?
T:そりゃ、お母さんの失敗だ。机の引き出しを勝手に開けたことに関しては、ちゃんと息子さんに 謝りましたか?
S:っていうか、今はそこじゃなくて。私は息子が塾の宿題やってないっていう約束違反について話をしてるんです。それを息子が、机の引き出しの話で、ごまかそうとしてるわけじゃないですか。それって本当に感じ悪いと思いません?
T:どうでしょうねぇ…。たしかに、息子さんは約束を守らなかった。お母さんが証拠を見てしまった。でも、お母さんも家族の約束を破ってしまったような状態ですよね?
家族であっても、大切なものが入っているカバンを開けないという約束。息子さんの大切なものが入っているであろう引き出しを開けたという事実がある。
それについて、お母さんは息子さんに謝らなかった…。
S:だって、宿題は必ずやってからゲーム、って約束してるんですよ。そこを注意をしてるのに、謝りもしないで、他のことで私を攻撃してくるって、おかしくないですか?
T:そうですねぇ…。私からみると、息子さんの意見に賛同したくなるかな。
息子さんの約束違反について何か言うとしても、まぁ。お母さんの作戦負けですよね。息子さんが抵抗できない状態で現場をおさえる、というか。引き出しを開けたのは、良くなかったかもね。
たとえば塾の先生に助けていただいて、宿題をやっていないという連絡があったことにするとかね。
いずれにしても、お母さんが家族の約束を破ったことに関して、謝った方が良かったような気がします。そうでなくても反抗期で、謝りたくない息子さんが、謝らないお母さんになんか謝りたくないでしょう?
S:それは、そうなんですけど…。でも他にも同じようなことが色々あって。とにかく、別の話をもちだして、ごまかそうとするのが本当に嫌なんですよ。
T:それ、きっと息子さんも同じように思っているのではありませんか?
お母さんは家族の約束を守らなかったのに、謝らない。別の約束について責めている。たしかに順番は逆かもしれないけれど、同じことだと思います。
いずれにしても、親の思い通りに子供を動かそうとしている。何歳であっても、反抗期であろうとなかろうと、信頼関係という意味で、やっぱり、ちょっと、どうかな?という感じはありますね。
S:親ですからね。言うべきことは言わないと…。
反抗期は熱病・筋肉反射
T:強いストレスを感じていらっしゃるお母さんに、酷な話かもしれませんけれど、私が感じていることをお伝えしますね。
息子さんね、3年生でその理屈というか、反抗のロジックは、なかなか素晴らしいですよね。家族との約束を、ちゃんと記憶していて。
親にとっては早すぎると感じるかもしれないけれど、今は反抗期にある。その症状が出るタイミングとか、表現方法というのは、個体差があります。
ひとつ知っておいていただきたいのですが、反抗期というのは、 期間限定の、一種の熱病のようなものなんです。
反抗というのは、動物として根源的な、生き残るためのプロセスですからね。親から離れて生き残るための、経験を積んでいるわけです。
食欲や性欲と同じように、抑えられない衝動なんですよ。今、息子さんに起きている衝動は、親のあらゆる言動に対して、自分のもてる限りの知識や経験をフルに使って、とにかく 逆らう。それが筋肉反射のように現れているだけ。
S:熱病?
T:そう、熱病みたいなもの。
S:筋肉反射?
T:そう、そんな感じ。
S:ちょっと…笑えるんですけど…。
T:そうそう、笑えてしまうような、一過性のできごとなのに、過剰に反応していないかな?って。
S:だって、本当にムカつくから…。
T:お母さんのムカつき度が、息子さんの反発力を高めているかもね。こちらからの刺激が強ければ強いほど、反発力も当然大きくなりますよね。
しかもお母さんは、夜の9時半から10時、揉める30分だけではなくて、一日中ずっと嫌な気持ちをもっていますよね。30分の不快感を、自ら増幅しているという、非常にストレスの強い状況。
私が想像するに、朝、目覚めて、息子さんを起こして、学校に送り出すときから、その30分のことを考えているのではありませんか?ずっと、そのシーンを思い描いて、不愉快な気持ちで過ごしているんですよね?
S:そうそう!そうなんですよ!10時に布団に入っても、すぐに眠るわけじゃないから。毎日、睡眠時間が足りてないから。朝だって自分で起きられないわけじゃないですか!
起こす時も、結局30分はグズグズするので、朝から喧嘩ですよ。
目覚まし時計を買ってくれたら起きる、って言うから、わざわざ目覚まし時計も買ったんですよ。でも、それ、使いもしないで。結局私が起こしてるんですね。
私は仕事もあるし、家事もやってるし、それでもちゃんと自分で起きてるわけじゃないですか。だから息子にも、わざわざ買った目覚まし時計を使って、自分で起きるように言ったんですね。
そしたら息子は、お前って、私のことですけど、お前だってスマホのアラームで起きてんじゃねーの、って。自分で起きてないじゃん、とか、そういうこと言ってくるんですよ!
T:いやいや、息子さんね、 なかなか鋭い。こんなこと言うと、ムカつきがおさまらないかもしれませんけど、なかなか賢くて鋭いお子さんですよ。しっかり反抗期を体験して、その先、楽しみですよねぇ。
S:そんなの困りますよ!約束も守れない大人なんて、本当に困るんですよ!
T:でも、約束を守らないお母さんのことを、ちゃんと見てる。約束は守らなきゃいけないっていうことは知ってる。この時期が過ぎたら、落ち着いてくると思うんだけどな…。
S:でも、このままだと困ります。私、本当に一日中 イライラするんです。
徹夜でゲーム
T:どうなんでしょうねぇ?そこまでゲームに熱中できるっていうのも、ひとつのエネルギーというか、集中力だとは思いませんか?一度、徹底的に、疲れて寝落ちするまでやらせてみるっていうのはどうですか?
S:そんなの!やったことありますよ!でも本当に朝までやってて、そのまま学校行かせて。授業中ずっと寝てたらしくて、仕事中に学校の先生に呼び出されて。周りに迷惑がかかるって私が怒られて。仕事もキャンセルして。本当にそういうの困るんで、もう絶対にやらせません。
T:そんなことがあったのね…。
S:このまま引きこもりとかになっちゃったら困るんですよ。だって学校がなかったら、本当に1日中家でゲームやってるんですよ。どうしたらいいんですか?
T:そうね。たしかに成長期の睡眠は特に大切だし。ゲームのやりすぎはね、身体的にも精神的にも良くない影響がある、と言われていますよね。
学校では、先生の言うことを聞いて、みんなと同じようにする…。たしかに、それが良い子なんでしょうけれど…。
お話を伺っていると、息子さんの場合は、いわゆる平均的な年齢なりの知力より、かなり高いのではないかと感じます。その個性的な息子さんを、なんとか別の形で見られないかな?と思って色々考えているんですけれども…。
そうですねぇ…。
これは私の印象ですけれど、お母さんのイライラが、さらに息子さんの反抗期を強めている感じなんですよね。
この件に関して、父親である旦那さんは、どのように関わっていらっしゃいますか?
S:もちろん話し合ってますよ!旦那はすごく優しいし、息子とも仲がいいから、仕事が早く終わった日は一緒にお風呂に入って、色々と説得してくれてます。
その時は、分かった、約束するって言うらしいんですけど…。実際に息子を寝かせる時は旦那はまだ仕事中だから、私が寝かせるしかないじゃないですか。
T:なるほど。息子さんは、お父さんとも約束している。でも、お父さんがいないときは約束を守らない…ということね。
こんな風に考えてみるのは、どうでしょう?
ひとつめの提案・話し合いの時間
その揉めごとの中心点、というか、9時半から10時の30分ね。
今は避けられない30分。その時間は、もうルーティンとして組み込んでしまう。たとえば 歯磨きとか入浴とか、ゴミ出しみたいにね。
面倒ではあるけれど、毎晩9時半から10時の間は、息子さんとの対話の時間ということにして。ゲーム、睡眠、健康、学校、塾、宿題、家族、妹さん、友達…。何でもいいから、息子さんの幸せに関わる話し合いの時間。
…いかがですか?
S:そんなこと、できるかどうか…。
T:難しそう?
S:他に、何かありませんか?
T:そうですねぇ…。ひとつめの提案は、9時半から10時は親子の話し合いの時間にすること。
ふたつめは…、こうしましょう。
ふたつめの提案・「私は」で話す
T:「あなたのため」と言わないこと。
S:え?それって、どういうことですか?
T:「私は」で話すこと。よく言われていることなんですけどね。
「あなたのためを思うから、こんなことを言うの」とか。「約束を守れない大人になったら、あなたが困るんだから」とかね。
つまり、あなたのために怒ってやっているんだ…みたいなこと。これ、子供にとって特に不愉快な言葉なんです。
大人になった私たちだって、求めていないこと、望んでいないことを「あなたのためだから」って言われたら、やっぱり不愉快ですよね。
今、息子さんは反抗期で、火の玉みたいになっている。そこに「あなたのため」で油を注ぎ風を送り、火の玉を大きくしてるようなものです。
「私は」あまたが約束を守らないので悲しい。
「私は」あなたの睡眠が足りないのではないかと心配だ。
「私」の気持ちだけを伝える。
だから、ゲームをやめなさい、とか、早く寝なさい、とか言わないでおく。
私は悲しい、私は眠い、私は疲れている…で、終わり。
子供は基本的に、母親を悲しませたくないものです。
母親を苦しませたくない、辛い思いをさせたくない、と思っています。
子供というのは、そういう生き物です。
息子さんが、どんなに激しい反抗期にあるとしても、やっぱりお母さんのことが好きで、お母さんに愛されたくて、お母さんを苦しませたり悲しませたりしたくないと思ってるんですよ。
これね、ぜひ、やってみてください。
S:はぁ…。分かりました。
みっつめの提案・ゆっくり、小さくて低い声で
T:あとは、息子さんに話しかけるときの声ですね。
S:声?
て:そうです。声。速さ、大きさ、高さ。これをコントロールしてみてください。
S:それって…。
T:普段、どうしても早口になるでしょう?
S:忙しいですからね。
T:うんうん。忙しいですものね。忙しいし、イライラするから、声が大きくなるでしょう?
S:ちゃんと聞いてないですからね。
T:うんうん。ちゃんと聞こえるように、どうしても大きな声になりますよね。ついでに声の高さ、どうしても高音になりませんか?
S:まぁ、そうなりますよね。
T:そこをね、コントロールしてみていただきたいんです。
できるだけ、ゆっくり。早口にならないように。
できるだけ、小さな声で。ギリギリ聞こえるように。
できるだけ、低い音で。喉の奥に響かせるような感じ。キンキン声は、誰だって聞きたくないですからね。
S:できるかなぁ…。
T:これね、自分を癒すことにもなるんですよ。
S:どういうことですか?
自分の声で自分を癒す
T:自分の声ってね、自分の心や身体に、大きな影響をもたらすんです。
自分の声や言葉遣いによって、自分を健やかにすることも、自分を苦しめることもできるんですよ。
なるべく、ゆっくり、ささやくように、穏やかな声で。
それだけで、ずいぶん楽になると思いますよ。
息子さんは今、反抗期という熱病、火の玉ですからね。
お母さんが声をコントロールするだけで、少なくとも油を注いだり、風を送ったりして火を大きくすることはなくなっていくはずです。
どうでしょう?
できそう?
S:うーん…。そうですね…。やってみます。
2秒だけ待つ
T:あとひとつ、これは、おまけ。
おまけだけど、けっこう効きます。
S:それ、聞きたい(笑)。
T:でしょ?
息子さんに話しかけるとき、2秒だけ待ってください。
9時になったら「9時だよ。あと30分。長い針が6になったらゲームをやめて、歯磨きして寝るんだよ」と言いますよね。
T:はい…。あ、ゆっくり、小さくて低い声で。
S:そうそう。そのとき。言葉を発する前に、心の中で「いち」「に」って、2秒数えてみてください。これだけで、言葉の響きがグッと変わってくるので。
これ、ぜひ。
S:分かりました。だけど、9時に「分かった」と言っておいて、本当に30分後には約束を忘れちゃう。どうしたらいいんですか?
男性の原始脳について
T:そうですねぇ。では、もうひとつ、お伝えしますね。
反抗期だから、とか、息子だから、とかいうことではなくて。男性一般論だと思って聞いてくださいね。
基本的に男性は、DNA的にね、いつも命をかけて生きてるんですよ。
S:はぁ?
T:命をね、毎日、毎秒かけてる。原始時代からね。
S:命、かけてます?
T:たしかにね、息子さんは親に守られているし、獣が襲ってくるわけでもない。でも原始的な脳は、特に男性の原始脳は、常に生命の危機に備えているんです。
自分の命、家族の命を守るため、緊急事態に最高のパフォーマンスを発揮できるように仕組まれている。
同時に、緊急事態、命の危険にさらされていないときは、できる限り脳を休めるようになっているんです。
息子さんの場合は、ゲームを取り上げられるのは、生存の危機。
S:生存の危機って…。
T:脳はね、そう認識しているかもしれない。ゲームを取り上げられるのは、脳にとって、生存の危機なのかも。
S:おおげさ過ぎません?
T:仕組みだからね。
S:はぁ…。
T:でね、危機ではないとき、男性の脳は、とにかく休みたい。休むためには、生存の危機に関わらない情報は遮断したいわけです。
お母さんがガミガミ言うことなんて、蚊の羽の音、プーンとか、ハエの音、ブーンとか聞こえるらしいですよ。
S:ありえない!
T:女性は、そう思いますよね。
とにかく、9時の息子さんは、まだこれからゲームができる状態ですよね。生存の危機ではないってこと。
お母さんの言葉は、雑音でしかない。いい加減に聴いています。
S:えーっ!
T:そういう仕組みだから。
S:もう、わけわかんない。
T:そうね。わかりにくいですよね。でもね、ここを受け入れると、本当に楽になる。
9時半になると、いよいよ生存の危機、ゲームを取り上げられそうになる。ここはグズグズ言って、なんとか自分を守らなくてはならない。
息子さんの防衛本能が、グズグズになっているわけ。
S:防衛本能…。
T:あとね、生き延びるために、その場をしのぐ。
S:え?
T:9時の危機を生き延びるために、目の前にある危機を回避するために、「うん」とか「わかった」と言ってるの。
S:だって30分後には、やめなくちゃいけないんですよ!
T:9時は、9時半ではないからね。危機は、その場その場で回避しないと。9時の危機は「わかった」で回避できる。生き延びるための知恵です。
S:それって…。
T:納得いかない?
S:ぜんぜん…。
T:ぜんぜん?
S:納得いかないけど、なんか、ちょっと、そういうこともあるかも、って思ってます。
T:今日はそろそろ終わりにしましょうか。
また気になることがあったら、いつでもご相談くださいね。
S:はい、ありがとうございました。
T:こちらこそ、ありがとうございました。